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その言葉を聞くと、カイは嬉しく思ったが、噛み締めていくうちに、言葉がでなくなるほど悲しくもなった。こんな料理を美味しいと、ご馳走だと思えるほどに彼女は長い間こんなところに居たんだと。そして絶望していたのだ。同情せずにはいられなかった。
後片付けを終えたカイは、毛布を二枚持って再びルシアの前に現れた。
「これ使って」
一枚をルシアに差し出し、格子の隙間から檻の中に入れる。自分はもう一枚にくるまり、そこへ座った。
「あの……。帰らなくていいの?」
なぜか遠慮がちにルシアがいった。
「今日はここで寝るよ」
「……危なくないかしら?」
「俺の事なら大丈夫……」
と言った後、ある考えが頭をよぎる。
もしかして遠回しに断っているのかもしれない。
考えてみれば彼女がそう思うのも無理はない。今日初めて会った他人がすぐそばで寝ているなんて居心地が悪いものだ。というか気持ち悪い。
カイは気付かれないように目だけを動かして彼女の表情を確認した。ここであからさまに負の表情をしていれば、遠慮した方がいいのかもしれない。
ルシアの顔は、夜で暗いのと、長い髪が邪魔で見えない。
カイは急いで付け加えた。
「君が嫌でなければ」
ルシアはゆっくりと口を開く、「本来なら、私のためにこんなごつごつ岩の上で寝て頂くことなどあってはならないこと、ですが」
いつの間にか彼女は長椅子から降りてカイと同じ目線で床に膝を抱えて座っている。
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