嵐のあと

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 その者の瞳は彼の存在を認めると、顔を歪ませ大粒の涙を流して泣いた。次第に両手で顔を覆い、わんわんと声をあげて泣いた。  カイはこの時はじめてこれの声を聞いた。  自分の声よりもずっと高く、細く小さな声だ。  カイは何年かぶりに見た自分以外の人間を、ただ呆然と眺めていることしかできなかった。
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