嵐のあと

6/6

4人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
 その者の瞳は彼の存在を認めると、顔を歪ませ大粒の涙を流して泣いた。次第に両手で顔を覆い、わんわんと声をあげて泣いた。  カイはこの時はじめてこれの声を聞いた。  自分の声よりもずっと高く、細く小さな声だ。  カイは何年かぶりに見た自分以外の人間を、ただ呆然と眺めていることしかできなかった。
/151ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加