4人が本棚に入れています
本棚に追加
あなたが私を見つけてくださって本当に嬉しく思います。ありがとう、カイ。
眠りに落ちる間際に聞いたルシアの話を、カイは夢にまで見た。まっ暗闇の中でルシアの声だけが光る。
朝起きてもその話が頭から離れなかった。
・
「ここにさ、壁と屋根と扉を……つまり家を作ろうって思うんだ、どうかな?」
朝食を一緒にとりながらカイが話す。今日は目玉焼きと木苺、酸っぱいリンゴを添えて。どうやらルシアはこの酸っぱいのがお気に召したようだ。
「でも俺家なんか作ったことないから、そんなに上手くできるかわかんないけどさ」
ルシアは目を丸くして口の中のまだ大きな何かの塊を飲み込んだ。
「だってこのままじゃ風が入ってきて寒いだろ? それにこないだみたいに雨が降ったら濡れちゃうし、虫とかも入ってくるかもしれないよ。嫌だろ?」
カイは檻の外の石畳を見渡しながら言った。ここも少し段差を作って、水捌けをよくした方がいいかもしれない。
「でも、そんなの……悪いわ。私はここから出られないのに」
ルシアは不思議に思っていた。
どうしてこの人は、自分のためにこんなにいろいろと優しくしてくれるのだろうと。
最初のコメントを投稿しよう!