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「何もできなくてごめんなさい。私は何も食べなくても死なないし、もう大丈夫だから、これからは何もしてくださらなくて結構です」
「え?」
カイはキョトンとしている。
「もうこのスープ飽きちゃった?」
「いえ……飽きたとかそういう事ではなく。あなたの負担になりたくないのです。私はただ何もせずいつもあなたが用意してくれる食事を食べているだけ……。申し訳無くて……」
カイはルシアがそんな風に考えていたとは思いもしていなかった。少し元気がないことを感じ取ってはいたが、自分の気のせいだと決めつけていたのだ。
カイは目を伏せているルシアを見つめた。ここ数日でルシアの顔色はずいぶんよくなった。驚くほど痩せこけていた顔も、少しずつ本来の美しさを取り戻しているようだった。元より初めに会った時も、整った顔立ちだとは感じていたが。
「カイ……?」
反応のない相手を心配に思いルシアは顔を上げた。
桜色の小さな唇がすぐカイの目に入った。ふわふわと柔らかそうに、下唇の真ん中あたりが膨らんでいる。なぜか見てはならないものを見てしまったような気持ちになって、カイはすぐに視線をそらした。
「えっと……なんの話だっけ」
「どうしてあなたはそんなに良くしてくれるんですか?」
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