奇妙な客・上

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「カイのおうちの屋根を直さなきゃ!」  あ、そういえば雨漏りしてたんだった。  このところほとんどここで過ごしていたのでカイはすっかり忘れていた。自分の家の屋根の修理をしなければならないことを。  何気なく話したことを、ルシアはちゃんと覚えていたのだ。 「ごめんなさい、私すっかり忘れてしまっていました……。ここより先に、あなたの家を直さなければならなかったのに」 「いや、謝ることないよ。俺も忘れてた。降らないうちに直してくる」  窓を閉めて、ランプに明かりを灯してからカイは自分の家に戻った。  屋根を修理してから間もなく雨は降り始めた。最初はポツポツと、そしてすぐに大雨に変わる。カイは家に入ると雨が収まるまで久しぶりに掃除でもしようかと思い付いたが、なかなか体が動かなかった。最近はめっきり掃除を怠っていたせいで少し埃がたまっている。部屋の隅で固まったそれが目に入ったので、もう見て見ぬふりは出来なくなってしまった。  ホウキを取ろうと、重い腰を上げたその時だった。  トントン、トン。  幻聴でなければ、木製のドアを叩くような音が聞こえた。     
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