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【106年】 「マチルダ、もう終わりにしていいよ。ご苦労さん」  ふっくらと艶々した頬の女性が、ウェイトレスの少女に声をかける。マチルダと呼ばれたその少女は笑顔でこれを受けた。  レダの町外れの田舎町にこの酒場はあった。昔は剣で城を守っていたというのが自慢のラックスは、太りすぎて鎧が入らなくなったために地元に帰りこの店を開いた。 「あまった料理、持って帰るかい?」  ラックスの妻リッチはマチルダに料理を持たせるため、まだ温かな料理とパンを包んだ。 「ありがとう!」  マチルダはそれを受けとると頭を深く下げた。エプロンを外し、綺麗に畳む。帰りの挨拶を済ませると酒場のドアに手をかけた。ドアを開く途中で、ずしりと重たい抵抗が突然軽くなる。外から誰かがドアを開けたのだ。 「マチルダ。もう帰るのか?」  マチルダは随分と顔を上にあげた。そうしないとこの声の主の顔が見えなかったからだ。  綺麗な歯並びの口が大きく笑う。そのあと、癖のない綺麗なブロンドの髪が目に入った。 「ミーケル。あんた大きすぎるのよ。もうすこし小さくなれないの?首がいたくなっちゃうわ」     
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