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奇妙な客・下
「ちょっと出てくるから。すぐ戻る」
ヴィダルが訪ねてきてから三時間ほどが経ち、雨は次第に小雨へと変わりやがて止んだ。カイは、この少年は雨が止めばすぐに出ていくものだと思っていたのだが、一向に席を立つ気配がない。
ルシアに夕食を持って行こうとドアに手をかけたところで、すぐにヴィダルに呼び止められる。
「出会ったばかりの私を置いて家を空けるというのか?私が盗人だったらどうするんだ。君の大切な枕の中身を全て生卵に変えられても良いと言うのか?」
カイは眉間に皺を寄せてドアを開けた。
変なやつだなぁと思いながら、彼の質問には答えずにルシアの所へ急いだ。
「ただいま」
家に戻ると、ヴィダルはちゃんとそこにいて行儀よく椅子に座っている。枕もふわふわのままだ。
「君は不用心すぎる。少しは警戒心を持った方がいい。そもそも人がよすぎる。これからは、見ず知らずの他人をホイホイ家に入れてはいけないぞ……。その調子じゃ何度も痛い目を見てきたことだろう」
「お、お前……ケンカ売ってんのか」
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