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とても冗談を言っているとは思えない真面目な顔での説教が始まった。カイはそんな話より、もっと聞きたいことが山のようにあったのだが、警戒心が少なすぎないヴィダルはきっと自分のことを話してくれないのだろう。
「ヴィダル、レダにいくつもりか?」
話題を変えるべく質問を投げてみる。答えてくれるかは分からないけど。
「それなら可哀想だけど、ここらの壁には出入り口がないから無理だと思うよ」
「……私はレダに用事などない」
そう言ったきり口をつぐんでしまった。
次の日も、そのまた次の日もヴィダルはカイの家を出ていかなかった。別にここに居たって構わないのだが、気になってしかたがなかったのでとうとうカイはヴィダルに尋ねる。
「行かなくて良いの?」
ヴィダルはカイの顔を穴が開くほど見つめた後、怯えた顔で答えた。
「どこへ?」
こいつは記憶でもなくしちまったのか?
それとも熱でもあるんだろうか?
黙ってヴィダルの額に手を当ててみる。
「熱い!」
瞬時に手を離してしまった。異常なほど高温だ。
「熱があるじゃないか! 大丈夫か? 寝てろよ!」
怪訝な顔を見せるヴィダルの背を押してベッドへと促すも、ヴィダルはそれを制止した。
「これが私の平熱だ」
「嘘つけよ! 額でステーキ焼けそうだぞ!」
「本当なんだ。気にしないでくれ」
カイはヴィダルの顔を見た。
確かに、あんなに熱かったのに顔には汗ひとつかいていない。顔色も至って普通だ。
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