奇妙な客・下

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 馬に逃げられたと言っていたが、荷物すら持っていなかった。遠くの村から来たらしいが、一体どんなに遠くからやって来たのだというのだろう。馬を失ってはもう戻ることすら困難ではないのか。見たところ、武器も持っていないようだし……。下手すれば普通の人間ならドラゴンに襲われたっておかしくない。  待てよ。武器を持っていないのにどうやって狩りをしたんだろう。  そう思い付いて、頭を振った。 「……やめだ、やめ」  自分にだって人に隠していることがある。  ましてや聞かれるのを嫌がっているものに、自分が無理に詮索していい権利などないのだ。 「待たせたな」  キッチンの扉が開いた。ヴィダルが両手に皿を持ってこちらへとやってくる。皿から上がる湯気でヴィダルの顔がよく見えない。同時に、部屋一杯に香ばしい香りが充満した。 「すごくいい匂いだ……」  一体ヴィダルは何を作ったというのだろう。  テーブルに置かれた皿を見てカイは溜め息を漏らした。  何とも得体の知れない料理がそこにはあった。今までに見たこともないものだ。そして食欲を大いに刺激するこの香り。腹の虫がいっぺんに騒ぎ出すのを感じた。 「うまそう!こんなの初めてだよ、お前の国の料理なのか?」 「私たちは料理などしない……」  カイはヴィダルの顔を見た。  またおかしな事を言っている。  ヴィダルはカイの間抜けな視線に気付き、言い直す。 「私の国の料理だ、食べてくれ」 「それじゃ、いただきま……」     
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