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言いかけて手を止めたカイに気が付き、ヴィダルはキッチンへと戻った。再び姿を現した彼の手には、もう1つの皿が乗せられている。
それを黙ってカイの皿の隣に置くのだった。
「君はいつも自分が食べる前に、どこかへ料理を持っていく。今日もそうしたいなら、これを持っていけばいい」
カイはヴィダルを見上げた。紅い眼の奥が美しく揺れている。
「ありがとう」
カイは、一瞬ヴィダルが悲しそうな顔をしていると感じた。彼と出会ってまだ間もないが、ふとしたときにヴィダルがとても悲しそうな顔をするのをカイは知っていた。
「一緒に来ないか?みんなで食べよう」
カイに連れられてやって来た粗末な小屋の中で見た光景に、ヴィダルは絶句する。
「カイの奴……人の良さそうな顔をしておきながら、こんないたいけな少女を監禁していたとは。最低な異常性癖だ。奴が居なくなった隙に私がここから出してやろう。まずは奴を油断させなくては」
「声に出てるよっ」
青い顔をしたヴィダルが絶望を浮かべた表情でカイを見つめていた。
「……勘違いすんなよ! 彼女は……ここから出られないんだ」
ヴィダルはルシアの入っている檻を見たあと、そのまま視線を上へと移動させた。
「ルシアです。このような場所からのご挨拶で失礼します」
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