奇妙な客・下

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 カイはまた横になって目を閉じた。 「……わかんないよ」  隣で衣擦れの音がした。おそらくヴィダルが頷いた音。 「彼女はあのような所に居ても身についた気品は隠せていない、随分悲しい思いをした事だろう」 「……何も聞かないんだな」  ヴィダルはルシアが檻に閉じ込められている理由も、そこから出られない理由も、何も聞かなかった。 「明日、君に話さなければいけないことがある」  少しの間を置いて、ヴィダルは小さな声でそう言った。 「今話せばいいだろ」 「……眠いんだ」  ヴィダルのその言葉を最後に、二人は眠りに落ちた。
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