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 ミーケルは酒場に入るとき、頭をぶつけないようにいつも腰を折ってドアを潜る。  彼はニコニコしながらマチルダを見つめると、彼女が両手に大事そうに抱えている料理を目ざとく見つけた。 「もしかして森に行くのか?もう暗くなり始めるからやめたほうがいいよ」  マチルダはミーケルの言葉に耳も貸さず、彼の脇をすり抜けるようにドアを出た。 「待ってくれマチルダ」  ミーケルはドアを閉め、走ると彼女の前に立ち塞がった。マチルダはその体に似合わぬ大きな態度でミーケルを睨み付ける。 「早くしないとせっかくの料理が冷めちゃう」 「明日にしないかマチルダ。この間ドラゴンが出たばかりだろう」 「この間ドラゴンが出たばかりならしばらくは出ないわ」  ミーケルは片手で顔を覆い溜め息をついた。この娘に口で勝とうなどと思ってはいけないのだ。 「カイの家に行くんだろ? わかった、俺が馬で送る。それでいいだろ? 断るなら意地でもここを通さないぞ」  マチルダは笑顔で礼を言った。ミーケルの馬に乗せてもらうと、馬の首筋を優しく撫でる。  カイ・ハイブリッジは、ここから少し離れた森に住む森番の息子だった。数ヵ月前、ドラゴンに両親を食われて一人になった。まわりの大人達はずいぶん彼に同情し支援したものだ。     
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