ヴィダルの秘密・上

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ヴィダルの秘密・上

 実に気持ちのいい朝だった。昨日二人が眠ったあとに雨でも降ったのだろうか、外へ出てみると地面が湿っている。でも空は、清々しいほどに晴れていた。  ヴィダルはまだ眠そうに目を擦るカイを誘った。 「散歩に行かないか。……森の方へ行ってみたい」  本来ならまだ寝ている時間だし、散歩なんか行きたくなかった。けれども、昨日寝入る前にヴィダルが言った、話がある という言葉。それを思いだしたカイは、その申し出を了承した。  カイは背中にカゴを背負い、手にはつるはしを持って家のドアを閉めた。 「なんだ、その格好は」 「森へ行くときは、いつもついでに何か採ってくるんだ。そろそろ豆と塩もなくなりそうだし」 「そうか」  先を歩くヴィダルの背中を見つめながら、カイは考える。  話ってなんだろう。まったく想像がつかない。今まで何も話そうとしなかった奴がいきなり話しがあるだなんて。もしかして、俺の家にずっと住みたいとか言い出すんじゃないだろうな……。そんなの、もちろん歓迎だけど。  そんな呑気なことを考えていると、突然ヴィダルが振り返り、木の根元を指差している。 「これは?」     
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