ヴィダルの秘密・下

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 思わず傍に駆け寄り、その体に手を伸ばした。ヴィダルは頭をカイに寄せる。カイは、とても大切なものを扱うように、ヴィダルの鼻先を撫でた。とても温かくて、そして湿っていた。 「……大きくなったな、見違えた」  カイはヴィダルの顔を抱き締めた。ヴィダルは目を細めて、息を止めた。そうしないと火の粉が口から出てしまうからだ。 「まさかお前が来てくれるなんて……」  カイはヴィダルの頭を離すと、嬉しそうにその顔を見つめた。  息が止められなくなったヴィダルは、急いで首を伸ばして空に向かって呼吸をした。勢い余って口から火の粉どころか炎を吐き出してしまう。 「熱いよお前!」  カイは声をあげて笑った。  ――この体では、君の傍にいるのに勝手が悪いな。  ヴィダルがそう言った次の瞬間には、その大きな身体はたちまち今朝までの、人間のヴィダルに姿を変えていた。  カイはそれを不思議な気持ちで眺めていた。 「早速だがカイ、話をしようと思う」 「え? まだ続きがあるの?」  この少年がさっきまであのドラゴンだったことがまだ信じがたい。カイはヴィダルの顔をまじまじと見つめながらそう思った。 「君と契約を行った、私の母が死んだ。君の気持ちによっては、この先の事を私と考えなければいけない。君にとっては少し辛い話になるが、私は必ず話さねばならない。聞いてくれるか?」     
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