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思わず傍に駆け寄り、その体に手を伸ばした。ヴィダルは頭をカイに寄せる。カイは、とても大切なものを扱うように、ヴィダルの鼻先を撫でた。とても温かくて、そして湿っていた。
「……大きくなったな、見違えた」
カイはヴィダルの顔を抱き締めた。ヴィダルは目を細めて、息を止めた。そうしないと火の粉が口から出てしまうからだ。
「まさかお前が来てくれるなんて……」
カイはヴィダルの頭を離すと、嬉しそうにその顔を見つめた。
息が止められなくなったヴィダルは、急いで首を伸ばして空に向かって呼吸をした。勢い余って口から火の粉どころか炎を吐き出してしまう。
「熱いよお前!」
カイは声をあげて笑った。
――この体では、君の傍にいるのに勝手が悪いな。
ヴィダルがそう言った次の瞬間には、その大きな身体はたちまち今朝までの、人間のヴィダルに姿を変えていた。
カイはそれを不思議な気持ちで眺めていた。
「早速だがカイ、話をしようと思う」
「え? まだ続きがあるの?」
この少年がさっきまであのドラゴンだったことがまだ信じがたい。カイはヴィダルの顔をまじまじと見つめながらそう思った。
「君と契約を行った、私の母が死んだ。君の気持ちによっては、この先の事を私と考えなければいけない。君にとっては少し辛い話になるが、私は必ず話さねばならない。聞いてくれるか?」
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