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カイ・中
小さなドラゴンと暮らし初めてから六日が過ぎた。まだ薄暗い朝、顔をつつかれて目が覚める。このドラゴンはまだ手加減を知らない。カイの頬は浅く傷付いた。
「痛い!」
心地よい睡眠を邪魔された上暴行を加えられた惨めなカイは小さなドラゴンを睨み付ける。が、違和感を覚えて目を擦った。
「あれ……なんかお前、大きくなってない?」
片手に乗るくらいの大きさだった小さなドラゴンは、今や生後10ヶ月の人間の赤ん坊くらいの大きさになっていた。
驚くカイをよそに、ドラゴンは「早く食事の用意をしてくれ」とばかりに甘えた声を出す。
家にあった薫製(くんせい)肉はこの朝に全てなくなってしまった。
昼からカイは町の肉屋で、鶏肉を買えるだけ買った。普段はこんなに買わないので不思議に思われたかもしれない。店主に何か言われたが、ドラゴンのことで頭がいっぱいでよく覚えていなかった。
家に帰るとドラゴンは待っていましたとばかりにカイに飛び付いた。驚くことにもう飛べるのである。優れた嗅覚で肉の入った袋を見つけ、早くよこせと地団駄を踏む。
――もう飛んだ。
カイは一抹の不安を覚える。
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