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次の朝早く、カイは家から出るとドラゴンと森を歩いた。まだ朝の食事は与えていない。ドラゴンはカイの服の裾を噛んで食事をねだったが、敢えてカイは与えなかった。
ドラゴンはカイを見上げると悲しそうに声を漏らした。チリチリと炎が映る瞳がカイに「どうして?」と訴えている。カイは、今まで味わったことのない感情が腹の底から沸いてくるのがわかった。いつの間にかカイはこのドラゴンを大切に思っている事に気が付く。だがそれを今は秘めなくてはいけない。もどかしくて、少し悲しい。だけど、やらなければならなかった。
「お前が自分で狩るんだ」
正直に言うとドラゴンに狩りを教えるなんてどうすればいいのか皆目見当もつかなかった。当たり前だ……そんなバカなことをする人間なんてレダ中のどこを探したっているわけがない。
ドラゴンと人間は相容れない。いつかこのチビも、俺を殺しに来るかもしれない。
だが今、カイはこうするしかなかった。他の選択肢など思い付かなかったのだ。
ふと思う、両親の誇りを継ぐ事が自分の使命だと考えたはずなのに、今の俺はまるで反対の事をしている。
両親の仕事には危険生物の狩猟もあった。なにより、自分の両親の敵(かたき)を間抜けにも保護している。自分でもわかっていた。自分の頭のおかしさに。
チビはカイの視線に気が付くと、首をかしげて彼の瞳をじっと見返した。
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