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「それにしても、太我(タイガ)さん。遅いですね。」
することがなくなった小林さんも、キッチンから出てきて、私が覗いている窓から、一緒に駐車場を見ている。
「雨の日は運転に気を使いますから、太我さん、運転に手こずっていらっしゃるんでしょうかね。」
還暦を迎えるまで、自分で車を運転していた小林さんは、その頃を思い出したのか、無意識に両手でハンドルを握っている仕草を見せた。
その仕草がとてもカッコよくて、ちょっぴり憧れる。
そして間もなく、駐車場に眩しいライトが入って来るのが見えた。
「兄さんだわ。」
私は急いでリビングを抜け出すと、兄さんが待っているだろう玄関へと急いだ。
「お帰りなさい、兄さん。」
「ただいま、美雨。」
玄関が閉まる音と一緒に、手に持っていたカバンを置いた兄さん。
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