興味

3/13
前へ
/35ページ
次へ
「お帰りなさいませ、太我さん。」 私たちに気を使って、少し時間を置いて玄関に現れた小林さんに、兄はちらっと壁に掛けてある時計に目をやった。 「ただ今戻りました、小林さん。こんな時間まで残ってくれていたなんて、終わらない仕事があったんですか?」 「ええ。でも終わりましたから、今日はこれで失礼します。」 そう言って小林さんは、自分のコートを羽織り、玄関の隅にあった靴を履いた。 「家まで送りますよ。」 兄が慌ててカバンから、車のキーを取り出すと、小林さんは首を横に振る。 「いいんです。太我さんこそ、こんな時間までお仕事なさってたんですから、早く休んで下さい。」 そして小林さんは、玄関のドアを開けると、傘をさして歩いて行ってしまった。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加