偶然

7/16
前へ
/35ページ
次へ
「驚いた。美雨ちゃん、こんなところで何をしてるの?買い物?」 あまりにも自然に聞かれたから、思わず“はい”って言いそうになっちゃった。 「あの……」 「ん?」 階堂さんはずるい。 その目で見つめられると、何も言えなくなってしまう。 「もしかして、ここで働いているの?」 階堂さんに、先に答えられてしまって、私は仕方なく『はい。』と返事を返した。 「そうなんだ。いつから?」 「……2週間前からです。」 「へえ。もう仕事は慣れた?」 「はい。」 ありきたりの会話。 今はそれだけでも嬉しい。 「そうだ。知人の誕生日のプレゼント探しているんだけど、美雨ちゃん、何かいい物ないかな。」 「誕生日……プレゼントでございますか?」 あっ、今の言い方、店員として失格だわ。 私は慌てて口に手を当てた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加