愛してるの基準 #2

5/5
前へ
/35ページ
次へ
愛してるなんて、二人の気持ちが燃え上っている時に一緒に見る夢のようなもので。 その夢が冷めてしまったら、自分でも相手の何にこだわっていたのかすら、思い出せなくなる。 仕舞には、お互い男としての、女としての役割を果たしていれば、それでよくなる。 その点、菜摘さんは恋愛に呆れかえっていて、それだけでは結婚が上手くいかない事を、身を以て理解している。 「菜摘さん。」 俺は、菜摘さんの手を取った。 「ここは、お父さんが言う通り、僕と結婚しませんか。」 「階堂さん……」 「僕は、あなたに人並みの幸せを、与えられると思う。」 そこで、俺は菜摘さんを抱き寄せた。 そこに、愛はない。 愛があるとすれば…… そこでふと、夏目の妹を思い出した。 どうしてだ。 まだ一目しか見ていない、あのあどけない女の子の事を。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加