心と体 #2

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もし美雨と知り合っていなかったら、おそらく森川社長の申し出を、二つ返事で受け入れていたかもしれない。 「だったら、いいだろうよ。ウチの娘に、不満でもあるかね。」 「いいえ。不満はありません。ただ……」 「ただ?」 こんな時は、やけに美雨の顔が浮かぶ。 「自分には、大事な人がいるんです。」 「大事な人?」 「自分の手で、幸せにしたい人です。」 そうだ。 きっと初めて美雨を見た時から、そうなることが決まっていたんだ。 「別に構わんよ。」 森川社長から返ってきた言葉は、俺には理解し難いものだった。 「いいか、階堂君。恋だの愛だのと言うのは、一時の勘違いに過ぎん。夫婦としてやっていくのは、一番は信頼だ。」 「わかります。」 この人だけは、自分を裏切らない。 一番の味方だという信頼が、より絆を深めていく。
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