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「君が一番迷った時、ピンチに陥った時。いくら君が相手を好きだからと言って、落ちぶれた家の娘に何ができる?」
「えっ?」
森川社長の言葉に、納得できない点があった。
落ちぶれた家の娘?
「調べさせてもらったよ。」
社長は、自分のポケットの中から、一枚の写真を取り出した。
不自然に思いながら、その写真を間近で見て、一瞬息が止まった。
映っているのは、俺と美雨だった。
しかもホテルから一緒に出てくる場面。
そこは初めて、二人の愛を確かめ合ったあのホテルで、美雨の兄である太我の目を避けるように、逢瀬を重ねてきた場所だった。
「夏目社長の娘とは。やるね、階堂君。」
俺はじっと森川社長を見つめた。
「夏目社長のご婦人は、誰もが一度は目を奪われる程の美貌の持ち主だった。」
「……知っているんですか?彼女の母親を。」
「知っているさ。俺も心を奪われた。一瞬でな。」
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