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「何が可笑しいんですか?」
その高笑いが、今の俺には不愉快だった。
「可笑しいさ。30も半ばを過ぎて、愛?笑わせるな。」
森川社長の言っている事は、当たっているのかもしれない。
この歳になって、愛だの恋だの語るほうが、間違っているのかもしれない。
だが俺は、美雨に出会ってしまった。
自分の人生を賭けても、幸せにしたいと願う人に、出会ってしまった。
「森川社長。あなたは寂しい人だ。」
「なに?」
社長の眼光が鋭くなる。
「あなたがおっしゃる通り、愛だの恋だのと言うのは、この世の中、ちっぽけな事なのかもしれません。」
「だからどうした。」
「だが、少なくても俺は人を愛する事を知っている。それを教えてくれたのが、彼女です。俺は彼女を諦めません。一生。」
シーンと辺りが静まり返り、俺と森川社長は、しばらくの間、見つめ合った。
「その愛と言うものが、身の破滅を呼ばなければいいな。」
そう言って森川社長は、立ち上がって部屋を出て行った。
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