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その店の帰り道、俺は一人考え事をしながら、暗い道を歩いていた。
森川社長に言った言葉に、何一つ後悔はない。
あの、お兄さんが菜摘さんと付き合ったから、自殺をしたという三科君の言葉通り、もしかしたら政略結婚の方が、仕事一筋に生きられるのかもしれない。
だが、俺はそんな人生を、選びたくない。
今までだって、社長の娘を結婚相手に勧められたのは、一度や二度ではない。
その度に断ってきたのは、心のどこかで、愛し合い信頼し合える夫婦関係を求めてきたからだと思うんだ。
そして、幸運にも俺はその女性と巡り合えた。
もう、何も迷うことなんて、ないはずなんだ。
「あっ、しまった……」
美雨の事を考えていたら、いつの間にか夏目の家の前に、辿りついていた。
今、なにしてるかな……
そう思ったら、無意識に携帯を鳴らしていた。
『はい。』
「美雨?今、何してた?」
『何って、大学の宿題してた。』
「そうか……」
ふと上を見上げると、美雨の部屋に灯りがついていた。
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