心と体 #2

19/35
前へ
/35ページ
次へ
「あっ、ここじゃあ近所の人に、変に思われるから家の中に入って。」 「あ、ああ……」 美雨の申し出は有難いんだが、一つだけ心に引っかかることがあった。 「今日、太我はいる?」 「兄さん?」 なんとなくあいつがいると、美雨と会いにくい。 「ううん。今日は出張でいないわ。」 「そっか。」 自分でも気づかずに、大きなため息をついた。 美雨は家の中のリビングまで、俺を心配そうに手を引っ張ってくれた。 「仕事、大変そうなの?」 「いや……大丈夫だよ。」 無理して笑ったのかもしれない。 美雨にはすぐに、それがウソだってわかってしまった。 「私に力になれるんだったら、何でも言って。愚痴ぐらいだったら聞けるから。」 胸がゆっくりと温かくなっていくのが、わかった。 俺はまた大きなため息をついて、美雨の肩に自分の頭を乗せた。 「敦也さん?」 「ごめんな、重いのに。」 ううんと美雨は首を横に振ると、そっと背中に腕を回してくれた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加