心と体 #2

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恍惚な瞳が、恥ずかしそうに目を潤ませる。 「そんなこと、できない……」 「うん……」 確かに一つになるには、限界がある。 我々は男と女であって、別々な個体。 いくら人間としての愛情があっても、生き物としての欲求が済めば、それは終わってしまう。 「離れたくないんだ。」 「敦弥さん?……」 「体と一緒に、心も求めてしまう。」 なんて切ないんだろう。 まるで胸が引き裂かれそうだ。 「美雨。君の体がほしい。でもそれ以上に、君の心がほしいんだ。」 今まで散々、他の女で身体だけを重ねてきた。 それでもよかった。 欲求が満たされれば、それで。 「私もよ、敦弥さん。」 美雨は俺の首に腕をまわした。 「私も敦弥さんの身体と一緒に心がほしいの。私の全てを焼き尽くすような熱い身体と、心が溶け合うような熱い心が。」 そして俺達は、貪るようなキスを交わした。 もう美雨は俺の一部で、俺は美雨の一部のような気が、その時したんだ。
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