心と体 #2

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そんな事を言わなくても、心使いの利いたおもてなしをしてくれるだろうと思っていたし、何よりも人によって態度が変わる事もないだろうと思っていた。 だが、俺はまだ人を見る目がなかったらしい。 女将は、相手が森川社長だと知ると、途端に態度を変えた。 無理はないか。 森川社長の羽振りの良さは、有名だ。 気に入られ、何度も店に足を運んでもらったら、どれだけ店にプラスになるかわからない。 残念だが、人間は自分に得する者に対しては、惜しみなく頭を下げるものだ。 「女将、そろそろ頼むよ。」 見かねた俺が女将に注文をすると、気のいい返事をして、そそくさと部屋を出て行った。 「あちらこちらに、愛想を振りまいて、忙しい女将だな。」 森川社長はとっくに、女将の真意を見抜いていた。 「悪い人ではないんですがね。」 あれでも、いつも笑顔で迎えてくれる人だ。 その証拠に、すぐにお酒を持って来てくれた。 しかも、一番いい酒。
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