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「婚約していて二人の間に、何もないのはわかってる。でも一時でも、菜摘を妻にしたいと思ってくれたのは、嘘ではないだろう?」
そこまで言われると、何も言えない。
「あのね、お父さん。そう言う事は、二人で決める事だから、お父さんが口を挟まないで。」
「うむ。」
森川社長は、菜摘さんの尤もらしい意見に、口を噤んでいる。
「すまなかったな、階堂君。」
「いえ、あの……」
すぐに美雨の事を言えなかったのは、なぜなんだろう。
「しかし、階堂君がそんな誠実な人間だとは、思っていなかった。まだ菜摘に、手を出しておらんとはな。」
「お父さん、いい加減にして。階堂さん、困ってらっしゃるじゃない。」
菜摘さんが必死に止めるのも虚しく、森川社長はヒートアップする。
「なあ、うちの娘。自分で言うのもなんだが、いい女だろう?」
「はい、そう思います。」
それは本当だ。
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