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涙をこぼしているうちに、録音は終わってしまった。
心が空っぽなまま、電話を切る。
そんな時、部屋のドアをトントンとノックする音が聞こえた。
涙を拭いて、私はドアを開けた。
「はい。」
「美雨。」
てっきり小林さんだと思っていたのに、そこに立っていたのは、誰でもない兄さんだった。
「入ってもいいか?」
「…うん。」
何の用だろうと思いながら、兄さんを部屋の中へと通す。
部屋の真ん中で、立ちつくす兄さんに、私はテーブルの傍に座るように促した。
女の子の部屋の中で、ちょこんと座る兄さんは、まるで生徒の部屋に迷い込んだ教師のようだった。
「どうしたの?兄さん。」
「ああ……」
何も話そうとせず、兄さんはテーブルの上に、自分の腕を置いた。
「…なんだか慣れないな。美雨の部屋に来たのは、高校生以来だよ。」
「ああ……」
あの時、私はまだ小学生で、親に叱られて部屋で泣いていた。
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