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「だがある日、三科に会って……今まで我慢していたモノが、一気に吹き飛んだ。大学時代から知っている同級生。社会人になっても、お互いの夢を語る仲間。その想いが、俺の中にある不満を全て吐き出させてた。」
俺はせっかく太我が注いでくれたワインを、そのままにして太我の話に夢中になった。
「するとあいつは一言、俺にこう言った。『俺がおまえの会社を助けてやろうか。』」
三科が太我にそう言った情景が浮かぶ。
「天からの救いかと思った。『本当か?』と体を寄せたら、条件があると言った。」
「条件?」
「……美雨を、『おまえの妹を、俺にくれ。』と。」
それまで冷静になって聞いていた俺の胸の中が、途端にざわつき始めた。
そのざわつきは、だんだん身体中を駆け巡って、俺の中身を侵食していく。
それを止めるかのように、俺は注がれたワインを、一気に飲み干した。
「もちろん、冗談だと思った。あいつは大学時代から付き合っている彼女と、婚約していた事は知っていたからな。」
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