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再びエレベーターの扉が閉まる。
「ありがとうございました。」
私はその知らない女性に、深々とお辞儀をした。
「もしかして夏目…美雨さん?。」
「えっ?」
私は顔を上げて、その女性を失礼な程に見てしまった。
「階堂さんの元へ行くの?」
なぜこの人は、そこまで私の事を知っているかしら。
「あの……」
「ごめんなさい。自己紹介がまだだったわよね。」
そう言ってその女性は、姿勢を正した。
「私は森川菜摘と言います。階堂さんの…友人です。」
「敦弥さんの?」
そして私は、何かを思いだしてハッとした。
森川。
もしかして、この人が……
敦弥さんが結婚を断ったっていう、森川社長のお嬢様?
「……美雨さん。あなたにたってのお願いがあるの。」
「私に?」
エレベーターの中、取り残されたかのように、二人で立ちつくした。
「ええ。美雨さん、お願い。階堂さんと別れてほしいの。」
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