8人が本棚に入れています
本棚に追加
そして現れたのは、髪はボサボサで、髭も生やしっぱなしの一人のオジサンだった。
「美雨!」
「……敦弥さん!?」
私は驚きを隠せなかった。
ヨレヨレのシャツ。
何日も着替えていないのか、首元の襟は少し汚れていた。
顔もなんだかしばらく会わない間に、老けたような気がした。
「まさか、ここに来てくれるなんて、思ってもみなかった。」
でもその笑顔は変わっていなかった。
「ハハハっ!驚くよな。こんな姿になっちゃって……」
恥ずかしそうに、ボサボサの髪を頭で掻いている。
「もう少しで仕事に目処が立ちそうなんだ。そうしたら美雨に会いに行くよ。」
私は顔を両手で押さえた。
「って言うか、その前に風呂か!」
何一つ変わっていない。
仕事に一途で、真っ直ぐな敦弥さんが、そこにいた。
私がいるばっかりに、菜摘さんとの結婚を断って。
そのせいで、理不尽に会社の倒産の間際に立たされて。
最初のコメントを投稿しよう!