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「でも、敦弥さんと出会って。人を愛することを知って。あの時の、あなたの気持ちがなんとなくわかったような気がするの。」
「へえ。どんな気持ち?」
胸が急に締め付けられて、目に涙が溜まってきた。
「私の事を、少しは……愛してくれていたんじゃないかって……」
そうよ。
愛する人を欲しくて。
少しでも自分の傍に、居て貰いたくて。
でもその方法が、わからなくて。
強引に奪って。
それでも、相手は自分を向いてはくれなかった。
「だから?」
「えっ?」
驚いた事に、彼は一切表情を変えず、私の目の前に立っていた。
「私の事を愛しているんだったら、兄さんと彼を助けてあげてとでも、俺に言いたいの?」
単調な言葉の羅列。
「言ったろ?これは取引だって。」
あまりにも冷たくて、私は一歩後ろに下がった。
「愛とか恋とか、女はよく口にできると思うよ。そんなのは、ただの妄想だと言うのに。」
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