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「妄想?」
「そんなモノ、この世に存在しないって事だよ。」
私は後ろに下がって行く身体を止めて、目の前の三科紘文を、睨んだ。
「この世は金だ。仕事も恋愛も、結婚生活も。金さえあれば全てうまくいくんだよ。」
「そんなことないわ。」
「それはね、美雨ちゃん。君がまだ甘えんぼの子供だから言えるんだよ。」
そうかもしれない。
今は勉強やバイトで精いっぱいで。
ただただ、敦弥さんとの恋愛に、溺れていただけなのかもしれない。
「さあ、雑談は終わりだ。あんたは、俺の女になって俺の身の回りの世話をする。その代り、俺はあんたの兄貴と恋人を助けてやる。うまくいけば、またどっかでサラリーマンやっていけるんじゃないか?」
彼はまるで、他人事のような軽い口調で、私達の人生を語った。
「心配するなよ。俺はあの二人みたいなヘマはしないさ。一生食べていくのに苦労はしないと思うぜ?」
そして、その唇を舌で舐めまわした。
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