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「でもおかげでもっと面白いことが起こりそうだ。」
彼はその一言を残して、私の元を去った。
三科紘文が去った後、私は無性に敦弥さんに会いたくなった。
胸騒ぎが止まらなくて、いくら胸を抑えつけても、それは一向に治まる事を知らず、返って大きくなっていくよう。
私はその震える手にある時計を見た。
夜8時半。
もしかしたら、敦弥さんはまだ会社にいるかもしれない。
そう思った途端に、足が勝手に敦弥さんの会社に向かっていた。
初めは恐る恐る、一歩一歩踏み出すかのように歩いて、その次は、急ぎ足になって。
仕舞には、逸るように駆けだしていた。
会いたい。
今、敦弥さんに会いたい。
会って、敦弥さんの力になりたい。
何があっても、敦弥さんの傍にいると、私の口から直接伝えたい。
そんな思いが、バイトで疲れた身体を忘れさせてくれた。
もう少しで着く。
恋しいあの人の元へ、辿りつく。
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