0人が本棚に入れています
本棚に追加
お米の目覚め
僕が目を覚ますと、目の前には広大な黄金色の海が広がっていた。真っ赤な夕日がさし、風が吹くと光の海に波が生まれる。昔の偉人が流れ着いたといわれる黄金の国とは、まさにこのことだったのだろう。
僕は感動に心震え、自然と涙がこぼれた。
……はずだった。
実際のところ涙は流れていない。
何故かって?
気がついたら、僕はお米だったからさ。
「ん、なんで僕お米になってんの!? さっきまで人間だったよね!?」
僕はさっきまで雷が轟く雨の中、戦っていたはずだ。
でも目の前には田んぼが広がっていて、僕もその中の一部となっている。
疑問が疑問を呼び、首をかしげていると、
「……ってあれ? 僕、どこでなにしてたんだっけ……ん?」
目が覚めた時には存在した記憶が、絵の具に水を足していくと色が薄くなっていくように、消えてしまった。
「あれ? ……僕は誰だ?」
ついには、僕の記憶はひと欠片も残されていなかった。
その代わり、心の奥底から何かが込み上がってくる。
僕は思わず込み上げてくる衝動を口にした。
「僕は米、なんてこったい。oh my god! オーマイガ! おー米が!! 米だけにね……」
思わずドヤ顔になった。
最初のコメントを投稿しよう!