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朝は学生やサラリーマンが暗い顔で通学・通勤する姿を眺め、昼は小さな子がお母さんと一緒に散歩しているところを目にし、夕方になると赤とんぼが僕の頭上で遊んでいる。
夜なんてただひたすら輝く星を観察するだけだ。
最初の頃は良かったが、今となっては退屈すぎる。
そんな日々が毎日繰り返されていた。
今日もそんな毎日の一部。お昼頃を過ぎようとしていた。
「ねぇユウ、暇すぎやしませんか……?」
僕と同じ状況下にいるユウも、きっと暇なことだろう。しかたがない、出来のいい弟が相手して挙げようじゃないか。
しかし、ユウの返答は思わぬものだった。
「そんなことないぞ。逆に忙しいくらいだ」
「はっ?」
一週間以上こんな暇な毎日を過ごしているはずなのに、なんでそんな余裕な回答をかませるんだ!
……さてはこいつ、かわいい弟の前だからってカッコつけてやがりますね?
「へぇ~、あっそ~? ふ~ん? じゃあなにしてるのさ?」
そう聞いてやると、
「考え事しているのさ。どうやって俺達が生まれたのか。これからどうなっていくのかなんてな」
出来すぎた兄だった。どうも兄という存在はみんな、この世の中では完璧であるらしい。あんな海賊とか、そんな忍者とか。
不条理な世の中の真理を発見し顔を渋めている僕を見て、
「じゃあお前はなにしてんのさ?」
心臓に悪い言葉だった。
どうしよう……少し盛っとくか。
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