お米の目覚め

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お米の目覚め

 僕が目を覚ますと、目の前には広大な黄金色の海が広がっていた。真っ赤な夕日がさし、風が吹くと光の海に波が生まれる。昔の偉人が流れ着いたといわれる黄金の国とは、まさにこのことだったのだろう。  僕は感動に心震え、自然と涙がこぼれた。  ……はずだった。  実際のところ涙は流れていない。  何故かって?  気がついたら、僕はお米だったからさ。 「ん、なんで僕お米になってんの!? さっきまで人間だったよね!?」  僕はさっきまで雷が轟く雨の中、戦っていたはずだ。  でも目の前には田んぼが広がっていて、僕もその中の一部となっている。  疑問が疑問を呼び、首をかしげていると、 「……ってあれ? 僕、どこでなにしてたんだっけ……ん?」  目が覚めた時には存在した記憶が、絵の具に水を足していくと色が薄くなっていくように、消えてしまった。 「あれ? ……僕は誰だ?」  ついには、僕の記憶はひと欠片も残されていなかった。  その代わり、心の奥底から何かが込み上がってくる。  僕は思わず込み上げてくる衝動を口にした。 「僕は米、なんてこったい。oh my god! オーマイガ! おー米が!! 米だけにね……」  思わずドヤ顔になった。     
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