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「うーん。でもなあ」
エリックが渋る。
「お前は馬にうまく乗れるか? なにしろコボルト兵の群れの中を駆け抜けるんだから、よほど馬に慣れてないとダメだ」
「それは……」
エリックの言う通りだ。
残念ながら乗馬にはまったく自信がない。
「誰かの後ろに乗るってのも無理だぞ。二人も乗ったら、重くて馬のスピードが落ちるからな」
「それなら私が行きます!」
突然、リナが叫んだ。
「私がユウトさんを後ろに乗せて走ります。私の体重なら、二人乗ってもたぶん馬の速さにはほとんど影響はないと思います」
「そりゃそうかもしれないが……」
エリックは首をひねった。
「リナ様、これは死ぬ可能性の方が高い作戦ですよ」
「でも上手くいかなければ、結局この護衛軍は終わりになってしまいます。そうなればみなさんも、そしてアリス様も……それだけは決してあってはならないことです」
「待ってください。リナ様を巻き込む訳には――!」
僕は焦って叫んだ。
リナの命を危険にさらすのだけは絶対に避けたい。
しかし――
「エリックさん、ユウトさん。私がティルファさんの暴れた馬を鎮めたのを見ていませんでしたか? 私は手綱さばきにはかなり自信がありますよ」
リナの意思は固い。
現実世界では幼なじみだから分かる。こうなるともう周りが何を言っても聞かないだろう。
顔だけではなく、性格もアリスと似ている部分があるのだ。
「アリス様」
エリックが尋ねる。
「ユウトとリナ様の申し出、どうされますか? ここはアリス様がお決めください」
アリスは一瞬沈黙し、静かに言った。
「いいだろう。私の命――いや我々全員の命、お前たち三人に預けよう」
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