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本当に、本当に異世界に来たのか?
そういえば、頭上に広がる澄んだ青空も、はるか彼方に見える切り立った山々も、道端に生えている見知らぬ草木ですら、何もかもが美しすぎる。
その上、中世の西洋風の軍隊とそれを指揮する美しい少女ときている。
まるで夢を見ているよう――
なのだが、それにしては五感で感じるものすべてがあまりにもリアルなのだ。
そんなファンタジーな風景をボーっと見とれていると、腰のベルトに付いている革袋が震えた。
この振動、スマートホンのバイブレーションだ。
僕は盾の持ち手から手を離し、そっと革袋を探った。
あった。
スマートホンと、ワイヤレスのヘッドセットイヤホンが手に触れた。
袋からこっそりイヤホンを取り出し、右耳に付ける。
イヤホンは超小型なので、兜の耳当ての下にうまく隠れた。
これなら他の兵士には気づかれないだろう。
さっそく通話キーを押す。
一瞬間があって――
「どう有川君? 異世界に来た気分は?」
この世界に僕を送り込んだ張本人、清家セリカの澄んだ声が耳に流れこんできた。
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