1.探索組合『ベルヴェデーレ』

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1.探索組合『ベルヴェデーレ』

 ルガリィルのほぼ中央、やや北寄りに在るテラタグラの街の外れには、かつてトスチャーの魔法使いたちが築いたと伝えられている城が今でも遺されている。  四千年余前に建てられたであろうそれが、まるで昨日落城されたばかりの姿を保ち続けているのは、『生き永らえている魔法』が在る証しに他ならない。  ルガリィルの人々からは、そう信じられていた。  その、名も明らかではない城には、理由も国も異なるありとあらゆる人々が訪れて止まなかった。  探索組合とは、城に在るという宝を欲して止まない人々を見張るための見晴しの(ベルヴェデーレ)のようなものだ。 ――そして事実、その名前の通りに呼ばれていた。  無論、組合を介さないで各々が勝手に城の中へと入っていったとしても、一向に構わない。 しかし、幾ばくかの金子を支払うことで内の様子を知れたり、仲間の伝手を得たりすることが出来る。  その利便さは、実に魅力的だ――。  そう思うが故に、魔道の研究を行なっている魔法召喚士、魔召士たるミハイエール・ラウレンは時折顔を出すようにしていた。
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