序 灰色ルガリィル

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序 灰色ルガリィル

 西方列国に組するルガリィル国は、北は魔法大国トスチャーに、南はそのトスチャーと敵対し、自ら反魔法術式、――略して『術式』を編み出したベルアメル王国に挟まれた国だった。  国土の広さは、例え、それら二つの国を足したとしても遠く及ばない。 しかしながら、その広大な国土のほとんどは険しい山々と深く緑濃い森林だった。  ルガリィルの民らは、点在する僅かに開けた土地へと散り散りになり暮らしていた。  今の世のルガリィル国に、王はいない。  主だった七つの街の太守らが持ち回りで、名ばかりの長を務めていた。 これは四千年余前、神々と精霊と魔法使いを始めとした人間とが入り乱れた大戦争の際に生じた、トスチャーとベルアメルとの対立に端を発している。  時のルガリィルの長は『国主』と称されていたが、その力は国の隅々までに遍く行き渡っていなかった。 国の内でも、トスチャーに付く地とベルアメルに従うのと、将又どちらにも属さないのと、実に様々に分かれてしまった。  大いなる戦いは、ベルアメルがトスチャーへと敗北を喫し、区切りがついた。  間に挟まれたルガリィルは、国主を失った。
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