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雪の日の出会い
「…………君は?」
なんとなく一人になりたい時に俺が決まって訪れるその場所に、彼女はいた。
振り向いた顔には、思った通り見覚えがない。俺と同じ高校生くらいに見えるのに知らない顔というのは、こんなド田舎では珍しい。
「何してんの?」
その問いかけに彼女は表情ひとつ変えず、手の中のカメラを掲げて見せた。写真を撮っていた、ということだろうか。しかし、カメラのレンズが向いていた方向には、真っ白に埋もれた木々しか見当たらない。
「………何もないけど」
「何もないからいいの」
そう言い放った彼女の表情には、やはり変化がない。
眼鏡の奥の大きな瞳は綺麗だが、どこか作り物のようだ。
「ふぅん………。それで、君は?俺、けっこう人の顔覚えるのは得意なんだけど、君とは会ったことないよね?もしかして、転校生とか?」
「私は………」
二人の間を一段と冷たい風が吹き抜ける。
「私は、雪女だよ」
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