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Prologue
皆さんは、憧れの人っているだろうか。
この人みたいに生きていきたいって、この人についていきたいって、そうやって思えるような人。
私にも、憧れている人がいる。その人は、今も多くの生徒に囲まれながら登校をしている。私は、それをただ遠くから見てるだけ。
穂積彼方さん。2年生で私と同級生ではあるのだが、生まれも育ちもオーラもまさしく"お嬢様"で、先輩も同級生もこの人には敬語を使ってしまうほど。
お嬢様とは言っても、いわゆる「ごきげんよう」とかそういうことを言うタイプではなく、どちらかというと凛々しいという言葉が似合う人だ。
実際にやっているわけではないと思うけど、弓道とか、そういう武芸に長けていそうなイメージを持たせる容姿をしている。
真っすぐで長い、綺麗な黒い髪。燃えるような深紅の瞳。そして華奢な身体ながら、堂々としたそのふるまい。見る者すべてを虜にしてしまうとはこのことで、私も例に漏れずその一人。
でも、この憧れは憧れのまま、何もなく、そしていつかは薄れてしまうものなのだろう。私とは全く別次元の存在。手が届かない美しい花は、私の中でいつしか枯れてなくなってしまうのだ。
そんなことを思うと、なんとなくため息が出てしまう。
――これからのことなんて、何も分からないのに。全てが終わってから、私はそう思うのだ。
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