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その日の放課後、また彼方さんを目撃した。しかも、今は一人だけのようだ。
中庭にある木によりかかり、一人ぽつんと佇んでいる。その姿に、ただ私は見とれていた。
「……私に何か用か?」
「ひゃっ!?」
見とれてぼーっとしていたがために、彼方さんに声をかけられるや否や、変な声を出してしまった。
「す、すみません。その、彼方……お嬢様がすごくお綺麗だったので」
「あー……お嬢様なんてつけなくていいぞ。あれはなんとなく重圧がかかる」
「そうなんですか……? それでは、ええと……彼方、さん?」
「ああ、そうやって呼んでくれた方が助かる」
意外な一面だった。彼方さん、お嬢様って呼ばれるの好きじゃなかったんだ……
「それで、何か用だったのか? 本当に私に見とれてただけなのか?」
彼方さんが笑いながら問いかけてくる。私は恥ずかしがりながらも「そうです」としか言えなかった。
すると、彼方さんは近くにあったベンチまで移動して、私を手招きする。
「こうやって会ったのも何かの縁だ。折角なら、ちょっと話していかないか? 他に用事があるなら別に構わないが」
「いえ! 私が彼方さんとお話しできるなんて……その、光栄です」
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