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「そりゃもちろん、この生徒会選挙だよ。私のイメージをできるだけ高く上げて、そんなすごい人の副会長なんて務めれば、その先安泰。進路だって優先的に推薦がもらえるだろうし、私の家にも名前は知れ渡る。実際どこまであいつらが考えてるかは知らないけど、そういうことだよ」
「それ、その人たちはばれてないと思ってるんですかね……?」
ここまで見通されてるなんて、流石に色々と脆弱すぎないだろうか。
「思ってないよ。実際、みんな私を勘違いしてるだろ?」
「勘違い、ですか?」
「そう、勘違い。私を堂々たるお嬢様って、みんな思ってるだろ?」
「そんな謙遜されなくて大丈夫ですよ」
「いや、それが本当なんだよ」
彼方さんは、そう言ってシニカルな笑みを浮かべた。
「でも、こうやって堂々と話されてるじゃないですか」
「それは……なんだよ」
ぽつりと、小さく何かを呟く。
「え?」
私が聞き返すと、彼方さんは意を決したようにこちらを向いた。
「こうやって……人の目を見て……その、話せないんだよ……」
彼方さんは、顔を赤らめながら、私の目を見ようとしてはすぐ逸らす。ええと……これは一体?
「私な、話すこと自体は苦手なわけではないんだが、人の目を見て……というか、誰かが私を見ているって考えると、途端に恥ずかしくなって、上手くしゃべれないんだよ。だからいつも、こうやってどこを見るでもなく人とは会話してるようにしてる」
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