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そう言われてみれば、今さっき私としゃべっていた時も、彼方さんは相手の顔を見てはいなかった。
「本当に、全然話せないんですか?」
そう言って、私が彼方さんの顔を見ようとすると。
「~~~~っ! だから、その、私を見るの、やめて……」
顔を赤らめ、左手でその赤い顔を誤魔化そうとし、そして言葉はたどたどしい。
……なにこれ、可愛い。
「……これで分かっただろ? 私はそんな堂々たるお嬢様じゃないんだよ」
ひとつ息を吐き、心を落ち着かせながら彼方さんは言う。
でも、だからと言って私は幻滅なんてしない。
「私は嬉しいです。彼方さんのそんな意外な一面が見られて」
「嬉しいって……君は変な人だな」
「何というか、お嬢様も人間なんだなって思いました。私には手が届かない存在だって思ってたけど、そんなことなかったっていうか」
少し驚いた顔で彼方さんは私の話を聞く。私はそんな彼方さんに、素直な気持ちを述べる。
「でも、私の中で彼方さんが憧れの存在っていうのは変わりません。それを聞いて、お役に立てるなら立ちたいって、もっと思えるようになりました!」
そこまで言い終えると、彼方さんはクスっと笑いながら、一つ提案をする。
「そこまで言うのなら、君に任せてみたいことがあるな」
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