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昔からずーっと、高校生になった今に至るまで周囲に言われ続けてきたことがある。
『仙道と秋吉って、実は生き別れの兄弟とかそんなんじゃねーの?』
仙道司、は俺の名前。秋吉慶太というのが幼馴染みの友人の名前だ。
確かに、元は赤の他人のはずの俺と慶太はよく似ている。見た目ではない。髪を染めたこともなければ特別成績優秀でもない、冴えないジミメンを地で行く俺と。金髪でそこそこイケメンな不良クンである慶太。残念ながら顔面偏差値は比べるべくもない。普通の女子は、不良なんてオプションがつけば嫌煙しそうなものだが――慶太の場合は別なのだ。ほっといてもそれなりに女が寄ってくる。イケメン滅びろと何度思ったか知れない。
ゆえに、よく似ているといわれるのは外見ではなくて、内面の方なのだ。つまり、性格や好み、趣味の方面がよく似ているのである。
「これだからっ!」
ババンッ!とテーブルを叩く慶太。
「これだから!男は損なんだよ!女は嫌なんだよーっ!!」
「わかる…わかるよ慶太クン。わかったからちょっと落ち着こうか、みんな見てるから」
本日の会議場所、近所のファミレス。安価で美味しいチェーン店、うちの高校でも寄る学生は多い。だから知り合いも来ているかもしれないし、下手な注目を浴びたら明日どんな噂を立てられるかわかったもんではないのだが――それでと今日は、此処がいいのだと慶太が言った。此処のチーズケーキを食べて慰められたい気分なんだよコンチクショー!ということらしい。
ああ、なるほどここのチーズケーキは旨い。俺も大好物だ。俺と慶太は食べ物の好みも同じ方向を向いている。チーズ味だけどチーズが主張しすぎない、甘さととろけるふんわり感が絶妙なのである。安いチェーン店にしておくのは勿体無いほどの出来映え。嫌なことがあった日ほど、好きなものでも食べて忘れたいのは非常によくわかるのだ。
そう、今日はダブルで嫌なことがあった日だったのだ。なんていっても俺と慶太、まるでタイミングを図ったように見事に二人揃って振られたのだから。それも、別々のカノジョにである。
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