逃避行

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「もしお前にその気があるのなら、助けられない訳でもない。そのためには、俺についてくることが必要だがな」  番兵は続けざまにそう告げ、返答を迫る。 「もし嫌だと言うのなら?」 「ならばお前を捕らえてギャングに突き出さざるをえないな。なにせお前は1万ゴールドの賞金が懸かったお尋ね者だからな」 「城の傭兵がそんなことをしていいとでも?」 「バレなければ問題はない。ただそれだけの話だ」 「ならば力づくで……」 「お前、本当に私に勝てるとでも?」 「何を?私はこう見えても……」 「武術大会で2回戦負け。私の顔を見忘れたか?」  番兵はリュウの言葉を遮るように問いかける。リュウが番兵の顔を見つめると、 「お前は……」  そうポツリとつぶやいた。リュウの顔が見る見る青くなる。それもそのはず、目の前の番兵はあの日完封負けを喫した男の顔だった。 「あの後鍛錬を怠りカジノに入り浸ったお前と、城の兵士として鍛錬と実践とを数多く重ねてきた俺、どちらが勝つかは明らかであろう。無益な殺生は好まぬ。さぁ私について来るのか来ないのか、選べ。選択肢は4つ。はい、イエス、もちろん、絶対行きます、お前に残された時間は10秒だ……5、4、3、2……」 「仕方ねぇな。分かったよ」  やぶれかぶれな様子でリュウがそう吐き捨てると、 「賢明な判断だ」  番兵はそう言うと馬にまたがる。そして 「乗れ!」  そう命じてリュウを馬の背中に乗せ、手綱を握る。 「これで役者が揃ったな」  走る馬の背中で番兵はそうつぶやいた。
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