11人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
「もしお前にその気があるのなら、助けられない訳でもない。そのためには、俺についてくることが必要だがな」
番兵は続けざまにそう告げ、返答を迫る。
「もし嫌だと言うのなら?」
「ならばお前を捕らえてギャングに突き出さざるをえないな。なにせお前は1万ゴールドの賞金が懸かったお尋ね者だからな」
「城の傭兵がそんなことをしていいとでも?」
「バレなければ問題はない。ただそれだけの話だ」
「ならば力づくで……」
「お前、本当に私に勝てるとでも?」
「何を?私はこう見えても……」
「武術大会で2回戦負け。私の顔を見忘れたか?」
番兵はリュウの言葉を遮るように問いかける。リュウが番兵の顔を見つめると、
「お前は……」
そうポツリとつぶやいた。リュウの顔が見る見る青くなる。それもそのはず、目の前の番兵はあの日完封負けを喫した男の顔だった。
「あの後鍛錬を怠りカジノに入り浸ったお前と、城の兵士として鍛錬と実践とを数多く重ねてきた俺、どちらが勝つかは明らかであろう。無益な殺生は好まぬ。さぁ私について来るのか来ないのか、選べ。選択肢は4つ。はい、イエス、もちろん、絶対行きます、お前に残された時間は10秒だ……5、4、3、2……」
「仕方ねぇな。分かったよ」
やぶれかぶれな様子でリュウがそう吐き捨てると、
「賢明な判断だ」
番兵はそう言うと馬にまたがる。そして
「乗れ!」
そう命じてリュウを馬の背中に乗せ、手綱を握る。
「これで役者が揃ったな」
走る馬の背中で番兵はそうつぶやいた。
最初のコメントを投稿しよう!