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支度金
ルナパレス王国の城下町は陸上の中継貿易の拠点として栄えており、それゆえモノ、ヒト、カネ、全てにおいて流通が活発だ。闘技場やカジノといった娯楽施設がこの街で発展したのもこういった背景がある。市場の品揃えも豊富。主力商品は金属製の武器とレザーアーマー、そして薬草である。というのもルナパレスの地は資源も豊富。南の地には大きな鉄山があり、東の地は皮革の原料となる家畜の飼育がさかん、そして西の地では薬草の原料となる良質なマンドラゴラがよく採取されるのだ。
3人は出発の準備をするために市場を散策していた。
「しかしハインもしみったれているな。支度金たった100ゴールドだぞ?何を準備しろって言うんだよ」
800ゴールドで売られているアイアンナックルを手に取りながら呆れた表情でリュウが言う。
「確かにこれではまともな装備は買えそうにないですね」
ランディはそう言いながら180ゴールドの値札の前に置かれているレザーアーマーをまざまざと見つめていた。
「とりあえず、非常用の薬草を何個か買って耐え凌ぐしかないでしょうね」
ランディはため息混じりにそうつぶやき、店主に薬草を6つ注文する。
「90ゴールドになります」
店主がそう告げると、ランディは後ろを振り返った。
「リュウさん、お金は?」
「あぁ、ロミオとやらに持たせているぞ」
「なるほど……で、ロミオさんは?」
2人の間で時間と空間の動きが完全に止まり、ランディの問いかけだけが虚しく響き渡った。
「まさか!あいつ!!!」
リュウはそう言うと、カジノのある方向へと一直線に走っていく。
「あ、私も行きます!」
ランディもそう言い、後を追いかけ始めた。
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